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世界最大規模の国際ロボット学会 IROS2022参加レポート~ムーンショット目標3のロボットが展示されていました~
京都で開催された国際ロボット学会でムーンショット目標3(以下、MS3)が出展しましたので、その様子を紹介します。
こんにちは。JSTムーンショット 広報担当のマサトです。
今回は国際学会の展示の様子を写真付きで紹介します。
今年の晩秋、2022年10月23日~27日に京都国際会館にてIROS2022という国際学会が開催されました。IROS(アイロス)とはIEEE/RSJ INTERNATIONAL CONFERENCE ON INTELLIGENT ROBOTS AND SYSTEMSの略称で、ロボット関連の学会では世界二大国際学会の一つとも言われている大規模な国際学会です。世界中から多くのロボット研究者が集まります。
もう少し詳しく解説すると、IROSはIEEE(アイトリプルイー)という団体とRSJという団体が共催する学会です。IEEEはInstitute of Electrical and Electronics Engineersと呼ばれる米国に本部を置く、世界最大規模の電気工学を中心とするその関連分野のアメリカ電気電子学会のこと。RSJはThe robotics society of Japanと呼ばれる、ロボット学に関する研究の進展と知識の普及をはかり、もって学術の発展に寄与することを目的に創立された日本ロボット学会のことです。
MS3の福田敏男 プログラムディレクター(以下、PD)(名古屋大学 客員教授)は、実はこのIROSを1998年に創設したメンバーの一人です。またIEEEの会長職にアジア人として初めて就任された方でもあります。IROSは年々その規模を大きくしていき、今では世界で最大級の国際ロボット学会として認知されています。
そのような大きな国際学会が今年は日本で開催されるということ、またその国際学会でMS3にて研究開発が進められている4つのプロジェクトの成果が展示されるということで、この機会を逃すまいと視察に行ってきました。
場所は京都国際会館。京都駅から地下鉄烏丸線で20分ほど移動し、国際会館駅から直通で会場まで行くことができます。
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国際学会ということで、受付も全て英語で対応するのではとヒヤヒヤしていましたが、日本語でも案内がありました。無事に受付を済ませて一安心。
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あちこちのスペースで研究発表や展示がされてましたが、
Event HallでMS3の展示がされていました。
会場内に入ったあとは早速MS3の展示コーナーに向かいました。道中には自動操縦のお掃除ロボットや四足歩行のロボットがウロウロ。ロボットの学会に来ていることを改めて感じました。
すると、Event Hallの一角にMS3の展示スペースが。こちらで4つのプロジェクトがそれぞれ研究開発しているロボット実機を一部持ち寄り、実際に動く様子を見せていました。
ここからは4つのプロジェクトでの展示をそれぞれ写真付きで紹介していきます。
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まず紹介するのは東北大学 平田泰久教授がプロジェクトマネージャー(PM)を務める「活力ある社会を創る適応自在AIロボット群」のブースです。このプロジェクトでは様々な場所に設置され、いつでも、だれでも利用でき、個々のユーザーに合わせて形状や機能が変化し適切なサービスを提供する適応自在AIロボット群の開発を目指しています。今回は特に介護の場での活用を想定したロボットを展示していました。
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いろいろな形のロボットが人間の生活に寄り添い優しく支える、人間が何かできるように手を差し伸べることをイメージし、デザインにこだわっていました。例えば「Nimbus Holder」と呼ばれる人間を優しくかつしっかり支える技術。人間の体重を支えるだけの強度をロボットに持たせるためには、ある程度の耐荷重性を持つ硬い骨格が必要となります。しかし、その骨格がむき出しだと、冷たく硬いアームに支えられることになってしまいます。そこで、柔らかさを感じさせるような素材でその周囲を包むことで、人間を優しく、かつしっかり支える技術を実現していました。
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また、人間の動作を支えるロボット技術の一例として立ち上がり動作を補助する技術を展示していました。人間が立ち上がる瞬間にその動作を支えることで、補助してくれます。
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場所や用途によって形を変え、優しくも力強く人間を支えてくれるロボットが生活に組み込まれていくことで、様々な人が安心で健やかに育つ社会が実現されるように思いました。(平田PM プロジェクトHPはこちら)
次に紹介するのは早稲田大学 菅野重樹 教授がPMを務める「一人に一台一生寄り添うスマートロボット」プロジェクトのブースです。このプロジェクトでは柔軟な機械ハードウェアと多様な仕事を学習できる独自のAIとを組み合わせたロボット進化技術の確立を目指しています。今回はスマートロボット開発の一例としてAIREC(AI-driven Robot for Embrace and Care)と呼ばれるロボット実機を2台展示していました。実際に自分の身長に近いロボットが動いているのを目の前でみると非常に臨場感がありました。
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黒い手に途中で横から妨害されてもめげずに作業を遂行するAIREC君。
このようなロボットが生活の側に居て、家事や接客などのお仕事を実行してくれたら、便利になると思いました。(菅野PM プロジェクト紹介ページはこちら)
次に紹介するのは東京大学 原田香奈子 准教授 がPMを務める「人とAIロボットの創造的共進化によるサイエンス開拓」プロジェクトのブースです。このプロジェクトでは科学者と対等に議論しながら、人では困難な環境(危険な環境、微細な環境、等)におけるサイエンス実験を行うAIロボットの開発を目指しており、今回の展示では人の動作を記録するため遠隔操作で微細な作業を行えるロボットの実演を行っていました。
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卵殻膜を破らないように卵殻だけを削りとる、人間の手でも緻密さが必要となる作業を、遠隔操作しているロボットアームで成功しており、これからは人間の手のサイズでは届かない細かく難しい作業も実現することができるようになるかもしれません。(原田PM プロジェクト紹介ページはこちら)
最後に紹介するのは東京大学 永谷圭司 特任教授がPMを務める「多様な環境に適応しインフラ構築を革新する協働AIロボット」プロジェクトのブースです。このプロジェクトでは月面や被災現場などの人が作業するには難しい環境において、当初と想定と異なる状況に対して臨機応変に対応し、作業を行うことが可能な協働AIロボットの研究開発を目指しています。今回の展示では人が入るには危険な災害現場で、小さなロボットが協調して動く、群制御ロボットの一例を展示していました。
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災害現場や月面など人間が行くことが難しいような場所で、複数のロボットたちが力を合わせて課題解決をしていく姿はなんだか応援したくなります。(永谷PM プロジェクト紹介ページはこちら)
こうして4つのプロジェクトの展示を一通り見学しました。これまでシンポジウムで研究開発の成果を画像などで見てはいましたが、ロボットの姿を実際に見るのは初めて。動いているロボットを実際に見ると、そのロボットの特徴やその開発の難しさ、緻密さが良く分かりました。オンライン会議の画面上でしか会ったことのない方と実際に対面で合うと、意外と思っていたイメージと違うといったような感覚に近いかもしれません。そしてロボットの動きを見ながら、人間が無意識下で複雑なことをいとも簡単に行っているんだということに改めて気づかされました。
展示とは別に、10月26日の午後からはMS3の研究内容をシンポジウム形式で発表するBig Challenge ForumがMain Hallにて開催されました。福田PDがMS3の全体概要を紹介した後、4つのプロジェクトでそれぞれ研究開発を行っている課題推進者4名が研究進捗状況を発表しました。国際学会に参加された方々へムーンショット研究開発を知っていただくよい機会となりました。海外からの2名の招へい者の講演を含め、約3時間にわたるフォーラムが終了しました。
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今回、世界各国の研究者が京都に集い、5日間様々なロボット関連の学術的議論がIROS2022でなされました。その中でムーンショット型研究開発も展示や特別フォーラムを企画し、各国への興味を惹くアピールにも繋がっていたように思います。
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2020年11月から始まったムーンショット型研究開発。2022年7月にはMS3では7つのプロジェクトが新たに採択され研究開発が加速していきます。ぜひ今後ともその動向にご注目ください。
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記事を書いた人 マサト
新卒で入職し現在3年目の若手職員
暖房をつけずにいつまで冬を凌げるか思案中