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気象の制御可能性に関する国際シンポジウム2024を開催しました

ムーンショット目標8では、台風や豪雨の強度やタイミングなどを変える気象制御により、極端気象による被害の軽減を目指して研究開発を進めています。

気象という途方もない大きさ・エネルギーを持つものを、人間の介入によって変化させることができるのでしょうか?また、科学技術としてできるのかということだけではなく、気象を操作することを社会は受け入れられるのでしょうか?
これらのテーマは、専門家・非専門家を問わず考えなければいけないものです。

今回の国際シンポジウムでは、韓国 Ewha Womans UniversityからSeon Ki Parkさん、アメリカ NSF National Center for Atmospheric ResearchからSarah Tessendorfさんの2名を招き、気象制御の実現可能性について、科学技術面、社会受容面から議論を行いました。また、オーストラリア Australian National University(以下、ANU)のThao Linh Tranさんには、ANUにおける台風制御に向けた研究について紹介いただきました。

発表内容の詳細は本シンポジウムのWebページ(当日動画あり)をご覧いただくとして、この記事では会場の様子を中心にお伝えします。

海外招待者からの発表

Parkさんからは、数値気象予測について自身の研究や最先端の知見を紹介いただきました。数値気象予測は気象制御でも根幹となる技術です。たくさんの質問があり、制限時間いっぱいまで質疑応答が続きました。

Tessendorfさんからは、アメリカにおける気象改変研究について紹介いただきました。
目標8では、介入を行いその場で雨や雪を降らせる気象改変と、気象のカオス性を利用して極端気象の影響を軽減する気象制御を区別していますが、気象への介入手法や介入しても良いのかという議論については共通する部分が多くあります。質疑では、科学技術や倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues:以下、ELSI)の面で、活発なやりとりがありました。

Tranさんからは、ANUにおける台風制御研究の紹介がありました。台風制御に向けて、ANUではどんなアプローチで研究開発を進めているのか、どのような結果が得られているのか、参加者は興味津々の様子でした。

左からParkさん、Tessendorfさん、Tranさん

目標8からの発表

三好プログラムディレクター(以下、PD)の目標8の紹介に始まり、8人のプロジェクトマネージャー(以下、PM)から、それぞれの研究開発の進捗紹介がありました。気象学・工学・数理科学・ELSIの学際的な取り組みについては、2日間に分けて発表と質疑が行われました。

三好PDによる目標8の紹介
筆保PMによるプロジェクトの進捗紹介

プロジェクトだけでなく、目標8ではプロジェクト横断で気象制御のELSI全般を検討するために、ELSI横断チームというものを結成しています。ELSI横断チームを代表して、課題推進者の笹岡さんからの発表には、目標8の研究者からも盛んに質問があり、侃々諤々(かんかんがくがく)でした。

ELSI横断チームからの発表と質疑応答

パネルディスカッション

目標8の中澤サブPD、標葉アドバイザーがモデレーターとなり、気象技術の実現可能性について、科学技術と社会受容の側面から、それぞれパネルディスカッションが行われました。どちらも答えが簡単にでる論点ではなく、登壇された研究者も時に悩みながら発言している様子でした。

終わりに

登壇された研究者の方々をはじめ、多くの方にご協力いただき無事にシンポジウムを終えることができました。会場・オンラインで数多くの方々に参加いただきありがとうございました。
今回は専門家向けのイベントでしたが、目標8では一般の人に向けたイベントも開催していきます。気象制御のある未来について、皆さんも一緒に考えてみませんか?


関連情報

ムーンショット型研究開発制度とは(内閣府)

■ムーンショット目標8
「2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現」

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