「治すから防ぐ医療へ」公開フォーラムレポート
目標2では、2050年までに、超早期に疾患の予測・予防ができる社会を目指しています。プロジェクトが描く未来像や未病とは何かを「より、わかりやすく」お伝えするため、今回は科学コミュニケーターの本田隆行さんを司会にむかえ、公開フォーラムを2024年3月23日(土)に開催しました。
こんにちは、JSTのムーンショット目標2担当のシモダです。
今回のフォーラムは日本科学未来館・未来館ホール(東京都江東区)とオンラインで行われ、あわせて約200名の方々が参加してくださいました。
開会挨拶・来賓挨拶
はじめに、JST理事 森本茂雄による開会挨拶のあと、来賓である内閣府の川上大輔審議官からビデオメッセージを頂きました。
プログラム紹介
まずは、祖父江元プログラムディレクター(以下、PD)よりご挨拶とプログラム全体の紹介です。
プロジェクトが描く未来像
各プロジェクトマネージャー(以下、PM)がショートプレゼンテーションを行ったのち、「プロジェクトが描く未来像」について、司会の本田さんが双方向コミュニケーションウェブサービス(Slido)を用いて募った質問などを交えながら、PMとのトークセッションを進めました。
病気を未然に防ぐための数理─複雑系としての身体と未病医科学─
病気を未然に防ぐ数理科学の研究です。健康状態から、疾病状態へ状態が遷移するときにみられる “ゆらぎ” に着目し、発病する前に病気の予兆を見つけ、そこで超早期に治療していくことを目指しています。
超早期がんの包括的理解による難治性がんの克服
難治性がんの予兆となる変化を捉え、その予兆を例えばスマートフォンなどで簡便に検知できる技術を開発することにより、全ての人が自身に最適ながん医療を享受できる社会を目指しています。
糖尿病で困らない世の実現へ
糖尿病や併発症の早期を簡便に検出し、シミュレータでメカニズムを判定。メカニズムにあわせた予防・回復技術を開発することで、糖尿病で困らない世の実現を目指しています。
認知症の「未病」に挑む-動物モデルとヒトコホートからのアプローチ-
脳の中の病的変化を、いかに早期に簡便に検出するか、末梢臓器間のつながり(ネットワーク)の変化や末梢血を解析して、「脳を知る」という新しい脳へのアプローチを提唱し、10年以内の発症予見の実現を目指しています。
パンデミックの脅威から開放された社会を目指して
ウイルス感染による生体応答でウイルスをパターン化し、各パターンに対応した超早期の診断・治療法を確立することで、新興感染症の脅威から開放された社会の実現を目指しています。
あなたにとって「未病」とは?
科学と社会の良い関係を築くには、いろいろな課題を解決していく必要があります。課題には、科学的な課題のほかに社会的な課題もあります。
合原プロジェクトの課題推進者である、藤田医科大学 医学部 教授の飯島祥彦さんからは、アンケート結果などを用いてムーンショット目標2に関連する社会的な課題が解説されました。
その後、祖父江PDも加わり、医師が未病状態と判断した場合に「(自分が未病状態にあると)知らせてほしくない」という、アンケートの回答結果について、「未病」とは何かを知ることの価値をムーンショット目標2の取り組みで一般化していくこと(新しい価値観)が必要という議論がありました。
公開フォーラム開催後のアンケートでは、「未病」についてもっと知りたくなった、「未病」に対する話し合いの場がもっと必要だと感じた、今の医療制度の治療の考え方に予防という考え方をぜひ追加してほしいなど、の意見が多くよせられ、この目標に対するみなさんの関心が非常に高いことを感じました。
また、今回の公開フォーラムでは新たな試みとして、科学コミュニケーターに司会をお願いしました。「聴衆を代表してくれる科学コミュニケーターのおかげで、質問しやすかった」「おかげ様で痒い所に手が届く感じでした」「最高でした」など、非常に好意的な結果となりました。
本田さんに感謝するとともに、このような「より、わかりやすく」に主眼をおいた広報活動の必要性を強く感じました。
令和6年度のムーンショット目標2の公開イベントは、令和7年3月29日(土)開催予定です。
次回も「より、わかりやすく」を主眼に、どのようなイベントにするか鋭意計画中です。ご期待ください!
関連情報
■ムーンショット目標2 公開フォーラム2024 ~治すから防ぐ医療へ~
■ムーンショット型研究開発制度(内閣府)
■ムーンショット目標2
「2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現」