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SFカーニバル「サイバネティック・アバターが生み出す身体の選択肢~SF作品と最新研究で語る未来~」に参加してきました!

はじめまして。JSTのモトキです。
今回は、2023年4月22日に代官山蔦屋書店3号館の2階、シェアラウンジで開催された「SFカーニバル」内で実施されたイベント「サイバネティック・アバターが生み出す身体の選択肢~SF作品と最新研究で語る未来~」について紹介します。

シックでカジュアルな雰囲気の会場には、
リラックスした登壇者と熱気あふれる参加者の緊張感が伝わってきました

ムーンショット型研究開発事業の目標1では、「2050 年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」を目指し、サイバネティック・アバター(Cybernetic Avatar:以下、CA)の開発を進めています。CAは、人の分身としてのロボットや 3D 映像などを示すアバターに加えて、人の身体的能力、認知能力及び知覚能力を拡張する ICT 技術やロボット技術を含む概念であり、人類が抱える様々な問題を解決し、より自由で制約のない社会を創造につながる可能性があります。

しかし、最新のテクノロジーが、社会に対して必ずしもポジティブな影響を与えるとは限りません。このイベントでは、CAが存在する未来を扱った3冊のSF作品で描かれた世界を参考に、現実の未来にCAが引き起こすかもしれない課題とその課題をどう乗り越え、より良い社会を創造できるかについて議論。さらに、科学とSFの関係性が語られました。

カジュアルな雰囲気の会場では、やや暗めの席に詰めかけた約40人(オンラインではさらに61人)の参加者から静かに熱気が立ち上っているようでした。ファシリテーターを務めたサイエンスコミュニケーターの宮田龍さんと、声優・文筆家として活躍しながらSF作家クラブ会長も務められた池澤春菜さんの軽快な掛け合いから始まった議論は白熱。目標1でCAの開発プロジェクトを担当する南澤孝太プロジェクトマネージャー(以下、PM)、金井良太PMがプロジェクトの研究開発内容も交えながら議論する形で進められました。

課題図書を紹介する池澤さん

池澤さんがあらかじめ選び出した3冊のSF作品を題材に、話は展開されました。
「接続された女」
  ジェイムズ・ディプトリ―・ジュニア(著)、浅倉久志(翻訳)1973年
「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」柴田勝家(著)2018年7月
「ゴーストドライバー」
  (『AI2041人工知能が変える20年後の未来』より)カイフ―・リー、
   チェン・チウファン(著)、中原 尚哉(翻訳)2022年12月

語られたCAのある世界は、新しい可能性に満ちた魅力的な世界であると同時に、重要な課題を示唆されていました。「元の身体とアバターのどちらが本当の自分か?」「肉体とアバターの相互作用で自分の中に生じる多様性」など、白熱した議論は、60分では足りないほど。今回題材となった3冊のうち、最初に取り上げた「接続された女」は、1973年代の作品、約50年前の作家の想像力にいま、科学技術が追いつこうとしています。「この作品を含め3冊から受ける示唆は、CAのある未来においてフィクションというより実際にあり得るサイエンスフューチャーだ」と南澤PMが、コメント。

CAについて説明する南澤PM
CAとSFの今後の展開について話す金井PM

南澤PMと金井PMは、SFの力を借りてプロジェクトを進めたいとも語ります。池澤さんからは「SFは予言ではなく、当たり外れはない。無数の未来を示すもので、いろんな選択肢、創造の幅を広げるもの」との発言。
SFの思い描く力、未来に向かう思考をプロジェクトに生かすべく、研究者とSF作家で共同の取組みを行っていきたいと南澤PM、金井PMが述べたのを最後に予定時間大幅オーバーでイベントは終了しました。

イベントに参加する前から、CAのある世界を好きなSF作品と重ね合わせて想像していましたが、研究者や私たちのモチベーションにもつながる重要な機会だったと思います。このイベントがSFと研究者、さらに様々な人々が共創する仕組みができるきっかけになる予感がします。
見逃した方は、アーカイブ動画が公開されているのでチェックしてみてください!


記事を書いた人 モトキ
2023年4月に研究開発マネジメント専門員としてJSTに入職した40代のオールドルーキー。好きなSF小説は、冲方丁先生の「マルドゥック・アノニマス」。

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