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1+1>2 ひとりよりも、ふたりなら。もっと広がる可能性

自分はここにいながらにして、分身のロボットがどこか離れた場所で働く…。
それは遠い未来のことではなく、サイバネティック・アバター※が接客したり、配膳したりすることは、すでに実現しています。
でももし、違う個性を持つ仲間と連携したら?もっといろいろなことができるかも!
それを実験する公開イベント、「共創アバターロボット実験」(2022年11月2日開催)に参加してきました。

こんにちは。JSTのムーンショット広報担当、ニシムラです。
日本橋にある、おしゃれなカフェ。以前から通りがかりに気になっていたお店ですが、そこが今回の会場である「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」だったとは! 嬉しい偶然です。
さっそく入ってみると、店内は広々とした空間にグリーンが多くあしらわれ、中央には大きなシンボルツリーもあります。この時期は紅葉で装飾されています。段差もなく、テーブルは大きめで角を丸くといった安全性やバリアフリーへの配慮がされ、椅子もスウェード張りなどで温かみがあり、とても居心地がよさそうです。

イベント準備が進んでいます

さて、各テーブルには 分身アバターロボットのOrihimeが待機しています。
か、かわいい! カフェエプロン&スカーフもバッチリ決まっています!
パイロット(OriHime操縦者の呼称)さんがログインして遠隔操作すると、生き生きと動き始めます。イベントのリハーサル中も、パイロットさんの操作によってお互いに「うんうん」と頷きあったり、「りょうかーい」と手をあげたりさげたりして、気持ちを表現しています。

リハーサルの様子。配信用カメラに向かって「段取り、OK!」

とても親しみやすくて、もちろんパイロットさんとの会話も楽しめます。
これはファンになってしまいますね…。

テーブルで接客中。動きにも各パイロットさんの個性があるそうです

今日の主役であるパイロットさんは、4名。
さまざまなバックグラウンドがあり、体を自由に動かすことや外出が困難な方々です。
PC操作にはマウス入力のほか、トラックパッド、トラックボール等、それぞれの身体的特性にあわせた方法が使用され、なかには視線(!)で操作しているパイロットさんもいらっしゃるそうです。滑らかな動きをするOriHimeを見ると、とても信じられません。皆さんのこれまでの努力の積み重ねを思い、深く感銘を受けました。

どんなイベント?

今回のイベントでは、2人のパイロットさんがそれぞれのOriHimeを介して、1台のロボットアームを遠隔操作し、パンケーキへのトッピングを実演します。そのほか、サイバネティック・アバター技術がつくる未来像について、研究者のトークイベントも行われます。

まずは、参加者からトッピングについてオーダーを取ります。

今日のお題はこちら。いったい、どうなるのか!? 完成してのお楽しみ

各々のリクエストをひとつに合わせると、なかなか難しいオーダー内容ばかり(笑)。それをどうトッピングで表現するか、パイロットさんの相談がまとまったところで、いよいよ実演です。

どういうトッピングにする?

パイロットさんがお互いに声をかけながら、ロボットアームを操作していきます。
クリームの絞り袋をピックアップして、パンケーキの上へ移動。
クリームの状態も毎回違うので加減が難しく、ただ絞るといっても大変です。丸くしたり、ねじったり、パターンもいろいろ。絞ったあと、離すにもコツがいるそうです。

ロボットアームを操作し、パンケーキの上にクリームを絞ります

さらに、マスカットや栗を1粒ずつ丁寧に乗せていきます。
直径10cmほどの小さなパンケーキの上に並べるのは、そうとう難易度が高い気がします。

パイロットさんが操作時に見ている映像。これは難しい!

パイロットさんの絶妙な操作で着々とトッピング作業が進むなか、トークイベントも開催。
これまでの実験の振り返りや、プロジェクトの背景、ムーンショット型研究開発事業の紹介も南澤孝太プロジェクトマネージャー(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)からありました。

お皿にもデコレーションを。素敵に仕上ってきました!

そして、トッピングされたパンケーキが、全部で4皿完成!!
このあと参加者みんなで分け合って、美味しく頂きました。

今日完成したパンケーキが勢揃い。難しいお題をそれぞれ表現しています!

実験意義

今回の実験は、ムーンショット型研究開発事業の目標1のプロジェクト「身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発」に関するもので、テーマは「共創」
例えば、1人がロボットアームを水平に動かしながら、もう1人が絶妙なタイミングで絞り袋の位置を下げてケーキに近づけていく、といった具合です。位置決めやトッピングのフルーツを離すタイミングなど、2人で連携することで、1人では難しい動作も可能になります。
それにとどまらず、グラフィックデザイナーとして活躍するパイロットさんと、料理人の経験があるパイロットさんという異なる個性の組み合わせで、よりクリエイティブなケーキが完成しました。

これまでの練習で完成した作品はバリエーション豊かで、どれも輝いています。見ているだけでも本当に美味しそう!最初は40分程度かかっていたそうですが、3カ月間の練習の結果、15分ほどで完成するようになったとのことです。

今後の展開

1人より2人で行うことによる、個性や技能の融合の妙が見えてきたのではないかと、研究者は話していました。さらに、「1人ではできなかったことが、2人で取り組んだら、なぜかできた」といった心理的な効果にも注目しているそうです。

また、OriHimeの動きは記録されるため、将来的にはバーチャルパイロットが再現したケーキをカフェで提供なんてことも可能になり、売れっ子パティシエが誕生するかもしれません!?
食べてみたいケーキをお客さんから募集して「ケーキNo.1決定戦」など、双方向な関係も築けそうです。

そして、身体的制約がある人々だけではなく、様々な事情があって働きたくても外出が難しい人、海外から働きたいといった人も、OriHimeのようなアバターがあれば、どこでも瞬間移動して活躍できてしまいます。
あるいは、人と直接、接するのは苦手だと感じていても、アバターを介することでニュートラルになり、コミュニケーションが取りやすくなるといった面もあるそうです。

物理的な距離だけではなく、心理的な距離も縮めてくれる。
アバターロボットの可能性は、ますます広がっていきそうですね!

※ムーンショット目標では、リアルやバーチャルなアバターだけでなく、人の身体的能力、認知能力及び知覚能力を拡張するICT技術やロボット技術を含む概念を「サイバネティック・アバター」と呼んでいます。

後記

ロボットの遠隔操作は負担が大きくて大変なのでは?という参加者からの質問に、「疲れよりも、ワクワクして飽きずに楽しくやっている」という、パイロットさんのお答えがとても印象的でした。

☆彡ちなみに、こちらのカフェは "コンピュータ界のオスカー"ともいわれる「Prix Ars Electronica(アルスエレクトロニカ賞)」を2022年に受賞しています。

OriHimeによるカフェサービスはご予約制です。
パイロットさんとのおしゃべりが楽しめるほか、バリスタ研修を受けたパイロットさんが遠隔操作し、目の前でコーヒーを入れてくれるロボットや、店内を案内してくれるロボットもスタッフとして活躍しています。
詳細はこちらをご確認のうえ、ぜひみなさんも足を運んでみてください 😊

『OriHime』『OriHime-D』『分身ロボットカフェ』は株式会社オリィ研究所の登録商標です。


この記事を書いた人 : ニシムラ
ムーンショット型研究開発事業の広報担当。先日ようやく予約がとれた、ハード系パンが美味しいランチブッフェを満喫してきました!ひとりで3000kcal(推定)は食べた気が…。(*‘∀‘)


その後さらなる実証実験

私が体験したような「遠隔共創トッピング」のほか、リアルとバーチャルを行き来する「拡張アバター接客」、複数のアバターを自在に操る「分身の分身おもてなし」を加えた3つのアバターカフェサービス実証実験の様子が、「日刊工業ビデオニュース」で紹介されています😃



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