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若者が想像した2050年の未来社会!

ムーンショット型研究開発事業の目標1では、サイボーグやアバターとして知られる一連の技術を高度に活用し、人の身体的能力、認知能力及び知覚能力を拡張するサイバネティック・アバター(Cybernetic Avatar。以下、CA)技術の研究開発を推進しています。
CA技術により2050年がどのような社会になるのか、未来を担う若者を対象にデモ体験やワークショップを開催(2023年1月~2月)し、彼らの考える未来社会を創造(想像)してもらい、寸劇形式で発表し合ってもらいました。その過程と寸劇の動画を紹介します。

まず、研究の現場でデモ体験と研究者との対話をしていただき、後日ワークショップを開催して、デモと対話の経験に基づいて、発表を行ってもらいました。

デモ体験と研究者との対話

中/高/大学生 計9名が、3人のプロジェクトマネージャー(以下、PM)の研究現場に赴いてデモを体験、研究者と対話しました。

  • 石黒PMの研究現場でのデモ体験
    京都にある国際電気通信基礎技術研究所(ATR)のロビーに設置された受付CAのERICAを、東京の日本科学未来館からPCを介して操作

東京から京都のCAを遠隔操作
  • 金井PMの研究現場でのデモ体験
    BMI(Brain Machine Interface)を使い、仮想空間フォートナイト内のアバターをコントロール(2022年11月に開催されたブレインピックでも実施)

脳波で仮想空間フォートナイトを操作
  • 南澤PMの研究現場でのデモ体験
    「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」にて、パイロット(ALS患者さん
     ら)が操作するCA(OriHime)よる接客
    ②CAを通した技能共有や経験共有体験

分身ロボットカフェ体験
技能共有体験(ロボットアームの共同操作)

ワークショップ、実機活用、4つのシナリオ作成

デモ体験や研究者との対話を踏まえて、若者、CA操作者の計17名が集まり、ワークショップを開催しました。今回は、リアルな参加だけでなく、遠隔からも様々なCAで参加があり、新しい形態のワークショップとなりました。

主な参加者(10代半ば~20代半ば)
 ・脳性麻痺のある、eスポーツプレーヤー
 ・脊髄性筋萎縮症(SMA)のある、分身ロボットカフェで接客を行う
  OriHimeパイロット
 ・工学知識と調理師免許をもつFoodTechクリエーター
 ・VTuber/XRデザイナー
 ・中学生プログラマー/アーティスト、高校生アントレプレナー

遠隔から参加したメンバーが使ったCA
 ・OriHime(分身ロボット)
 ・newme(遠隔操作ロボット)
 ・CGキャラクター・アバター

このようなメンバーで、前半は4チームに分かれて、社会・未来について検討するワーク。後半は、各チームが未来のシナリオをつくり、寸劇形式で発表しました。
丸一日に渡る長時間のワークショップにもかかわらず、前半後半とも活発な議論が展開されました。CAを使った参加者も、リアルな場にいるのと同様に熱い議論を交わし、寸劇での役割を演じていました。

ワークショップ:ディスカッション(チームA)
ワークショップ:ディスカッション(チームB)
ワークショップ:ディスカッション(チームC)
ワークショップ:ディスカッション(チームD)
ワークショップ:寸劇(チームB)

デモ体験、ワークショップ、まとめた寸劇の模様、そして、今回のイベントに関する感想を若者自らの言葉で語った動画がこちらです。

チームA:#01 アイデンティティーの広がる社会

チームB:#02 仕事が「必要なこと」から「遊び」になる社会

チームC:#03 パンデミックでも繋がり合える社会

チームD:#04 2050年のパーソナルモビリティー

デモ体験&ワークショップを終えて

ワークショップを終えた直後の参加者の方々からさまざまな感想をもらいました。
[VTuber]
リモートワークをしている関係から、以前から会社に自分のアバターロボットがいるといいな、それなら作ろうかと何となく思っていました。今回のデモでOriHimeに会い、パイロットさんとお話させて頂くことでその思いを強くし、物理⇄デジタルアバター⇄ロボットアバターをシームレスに行き来する「サイバネティック・アバター VTuber」としてこの先やっていくことに決めました〜(中略)〜サイバネティック・アバターが浸透する「文化」について考えていきたいと思ったのは、今回のデモとムーンショット型研究開発事業のおかげです。ありがとうございます!
[中学生]
体験の前はゲームやアニメの中の技術のように思っていたものが実際に自分の感覚を通して操作・感じること、また技術でできそうなこと・起きそうなことを考え話し合うことでCA技術が社会実装される日がそう遠くないように感じられました。
CA技術は人生の体験・影響の範囲をより広く・奥深くし、生産性や創造性の向上、医療・教育・エンターテインメントなど様々な分野において欠かせないものになり、人生においても欠かせないものになると考えました。
[OriHimeパイロット]
最も共感したシナリオは、チームCの「2050年 テクノロジーが人々の差異を埋め、物理的な距離を超えた出会いや機会を提供する社会」です。
理由は、OriHimeと似ていてそうなっていて欲しいから。物理的に不可能なことでも可能になる未来になって欲しいからです。
今回のデモ体験/ワークショップはとても勉強になり、とても楽しかったです。少しでも不自由の少ない未来になりますように。
[eスポーツプレーヤー]
(デモ体験を通じて)諦めていた事ができるかもしれないと前向きになれた。出来ることが増えて自由度が増す感じがした。ゲームだけではなく、日常生活の中で生かせれば、効率が上がると感じた。(ワークショップを通じて)障がいの有無は関係ないと思えた。グループで話し合っていて、その人の生き方や学んできたからこその考えが生まれていると感じた。様々な分野のことを学んでいきたいと思えた。
今回参加して多くの方と知り合う事ができました。みなさんと楽しくまた、意見交換できたら嬉しいです。
[大学生]
2050年への解像度がグッと上がりました。改めて、職業だけではなく、何もかもが変わってしまうのだと再認識しました。それでも、「コミュニケーション」や「美味しいものを食べたい」など、過去から変わらない欲求や悩み、人間としての営みがあることも認識できたことが嬉しかったです。ムーンショット目標1関連の研究者の方と、今回のように未来について語り合える時間やお互いの妄想を話すコミュニケーションのチャンネルがあれば嬉しいです。研究者の皆さんの考えている未来の一片を知ることで中高生の学びへの意欲につながると思います。
[FoodTechクリエーター]
OriHimeが想像以上に素敵だった。フォルムや動きがかわいらしくて社会に受け入れられやすい見た目になっており、自分もOriHimeに入ってみたいと思った。また、会場内の別の機体にワープできるところを見て、瞬間的に移動できる点をもっと活用できるような例を探したいと思った。
アバターやVR空間で出張料理をしてみたい。各家庭のキッチンに取り付けられたロボットアームに憑依(ひょうい)し、お家の人との会話を楽しみながらその人に合わせた料理を作るようなことをやってみたい。

さいごに

今回、未来を担う若い方々にムーンショット目標1のデモを体験していただき、実際にCA使用した遠隔からの参加者も交えながらワークショップを開催して、未来の社会像を想像していただきました。その結果、自分たちが暮らしたい多様な未来社会像が創造されました。正解があるわけではありませんが、これから実用化される新しい技術にワクワクしながら、自分ごととしての自分たちがどんな未来を創っていくかを真剣に考えていくための一助になれましたら幸いです。

「OriHime」「OriHime-D」「分身ロボットカフェ」は、株式会社オリィ研究所の登録商標です。


この記事を書いた人:
2022年よりムーンショット型研究開発事業目標1担当のオジサンです。
今回の動画を制作するにあたり、若い方々と接し話をする機会を得ました。
皆さん、ものすごくしっかりした考えを持っていて、それを表現できていて、感心しきりでした。自分がその年齢の時はなーんにも考えてませんでしたけどね。


■ムーンショット目標1
「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」


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