気象制御を探究する高校生、筆保PM研究室を訪問
先日、自修館中等教育学校の生徒さんによる、横浜国立大学・台風科学技術研究センターの研究室訪問に同行してきました。
こんにちは、JSTのコウです。今回の研究室訪問の主役は出縄美央さん(自修館中等教育学校 5年)。この出縄さんと、私の出会い(一方的な出会いではありますが)は、2021年にさかのぼります。気象制御をテーマとする研究開発プログラム(ムーンショット目標8)が決まる前、「気象制御」の予備調査をしていた時に目にとまったネット上の資料がありました。
「気象制御」のような、言葉通り「雲をつかむ」ようなものを、論理立てて探究しようとしている生徒さんがいるんだと、心が躍りました。
この資料、自修館中等教育学校の出縄さんという生徒が、探究学習で気象制御の調査をして作成したものだということがわかりました。
それから、約2年。2022年6月に行われたムーンショット目標8のキックオフシンポジウムに、出縄さんはオンラインで出席してくれました。その後の2023年4月には、約2年間かけて調査した結果をまとめた12ページにもわたる論文も送ってくれました。しかも、その中には「今後も調査を続けたい」とあります。
この段階まで来ると、「心が躍る」をはるかに通り越して、感動です。
ここまでやってくれるならば、お節介優しいオジサンが一肌脱がずにどうする!
ということで、ムーンショット目標8のプロジェクトマネージャー(PM)の1人である横浜国立大学・筆保弘徳教授に(心の中で土下座をしながら)お願いし、出縄さんの研究室訪問が実現することになりました。
お待たせしました!やっと本題です。
自修館中等教育学校からの訪問者は3名、出縄さん、そして気候工学について探究学習を始めた伊藤敦子さん(同校3年)と引率の田邉一也教諭です。
駅で待ち合わせて、最初の訪問場所である横浜国立大学高等研究院棟に到着したのは、集合時刻の10分前。まだ早いかな~ということで、台風科学技術研究センターの看板前に立って記念撮影。
そうこうしているうちに、横浜国立大学の皆さんがいらっしゃいました。
お互いの挨拶から始めます。緊張しているのか、お互いガチガチです。
まずは、台風科学技術研究センターの第一研究室から見学開始です。ただ、タイミングが悪く、研究者も学生さんもいません。廊下に貼ってあるポスターパネルを使って、ムーンショット目標8で進めている研究や、筆保PMが中心になって進めているタイフーンショットについて、説明を頂きました。
その後、筆保PMの居室や、第2・第3研究室のある教育学部第2研究棟に移動し、研究機器の見学です。
最初に、回転水槽。筆保PMによると、以前は日本全国の研究室にあったが、今は数少なくなり、日本にはここしかないのではないか、とのこと。
回転速度や水槽の温度など、いろいろな条件を設定して、水槽をクルクル回して実験しているとのことですが、この日の条件では残念ながら面白い現象は見えず。
上手くいった際のビデオを見せて頂きました。
次に、屋上にあがって、さまざまな気象観測機器の見学。
機器の説明から始まり、これまでの研究からわかったことなどを、教えて頂きます。
筆保PMの本業は、台風だけではなく気象全般のマニア…ではなく研究。
台風はもちろん、豪雨や雷まで、幅広い話をたくさん伺いました。
最後に、研究者とのディスカッションです。
用意周到な出縄さん、周辺環境への影響や国際的な枠組みの状況など、答えにくいところを突く鋭い質問を用意してきてくれていました。
研究者以外の新しい視点や疑問から、研究の新しい展開へのヒントが生まれることも多く、研究者の皆さんにとっても嬉しい刺激になったのでは、と思います。
楽しい時間も終わり、筆保PMをはじめとする皆さんにお礼を伝え、帰路に就きました。
大変忙しい中、ご対応いただいた横浜国立大学の先生方、ありがとうございました。
出縄さん、伊藤さん、生き生きした姿の君たちにまた会えるのを、楽しみにしているよ!
(横浜国立大学のおくむらさん、自修館中等教育学校の田邉さんに写真をご提供いただきました。ありがとうございました)
■ムーンショット目標8
「2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現」
■筆保弘徳PM 研究開発プロジェクト
安全で豊かな社会を目指す台風制御研究
■内閣府 "未来社会の担い手×ムーンショット研究者" 交流会
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/miraidiscussion.html