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日本ロボット学会学術講演会(RSJ2022)オープンフォーラムに行ってきました

2022年9月9日、東京大学で行われた第40回 日本ロボット学会学術講演会(RSJ2022)オープンフォーラムに行ってきました。オープンフォーラムは、全部で15企画も開催されましたが、その中からOF14 「ムーンショット型研究が目指すアバター共生社会」の様子を紹介したいと思います

こんにちは。ムーンショットの広報を担当しているワタナベです。日本ロボット学会(RSJ)は、「ロボット学に関する研究の進展と知識の普及をはかり、もって学術の発展に寄与すること」を目的に創立され、今年で40周年を迎えます。この記念行事の一つとしてオープンフォーラムが開催されました。一般公開のオープンフォーラムということで、コアな専門的解説はなかったものの、研究開発の先端を垣間見られる内容でした。

ムーンショット型研究が目指すアバター共生社会

これは、ムーンショット目標1・石黒プロジェクトマネージャー(以下、PM)のプロジェクトに参画する研究者が協力して企画・開催したセッション。石黒PMの基調講演はイタリアからのオンラインで、「アバターと未来社会」というタイトルでした。

石黒PMの基調講演はイタリアからオンラインで行われました

長年、人と関わるロボットの研究開発を続けてきた石黒PMから、「少子高齢化が進展し労働力不足が懸念される中で、介護や育児をしなくてはならない人、障がいを持つ人や高齢の人など、様々な背景や価値観を有する人が、自らのライフスタイルに応じて多様な活動に参画できるようにすることが重要」と、サイバネティック・アバター(以下、CA)の研究の背景が説明されました。
もともと人間は人間を認識するための脳を持っているため、人間型ロボットは理想的なインターフェースとなりえる。それゆえ、アバターは人間そのものを進化させ、人間を理解するためのツールになるという説明。ロボットの研究は人間そのものを理解することにつながるということのようです。

サイバネティック・アバター(CA)は、様々なシーンで活躍する

一人で複数のアバターを使うことができれば、
・教師が、一人ひとりの子どもたちの能力に合わせて教育できる
・ホームドクター制が、より現実的に。大きな総合病院では、担当医のCAが患者のもとに出向いて診察するように。また、小さな病院では専門医のCAが治療に参加することで総合病院のようになることも
などの例をだし、多くのメリットを説明されました。また、これらの実現に向け、数多くの実証実験にも取り組んでいます。

一方でCAと共生するする社会、仮想化実世界を実現するには、様々な倫理的問題があり、これらについても提示されました。

次は、石黒PMのプロジェクトで課題推進者(以下、PI)を務める長井先生。「アバター共生社会プロジェクトにおける物理操作アバター」というCAの物理操作に関する研究の紹介です。複数台のCAを一人が同時に操作するためにはそれを支える仕組みが必要。CAと接している人が不自然に感じないように、人の操作からAIに切り替わらないといけないというわけです。それらに向く操作方法を探究する一方で、操作者の満足度も重要な要素。操作者が「自分でやった」という感覚も重要だということです。様々なタイプのCAと人が共生する社会の実現には、人の操作や自律やシェアードコントロールが混在することになるだろうと長井PIは話します。

長井PI 「アバター共生社会プロジェクトにおける物理操作アバター」

続いて、宮下PIは「アバター共生社会におけるソフトウェア基盤の研究開発」というテーマ。CAを使って様々な人の社会参加の選択肢を増やすためには、様々な利用条件の操作者が様々な形態のCAを同時に操作できる社会基盤が必要になります。この基盤の上で操作するパターンの組み合わせも膨大なものになります。

宮下PI 「アバター共生社会におけるソフトウェア基盤の研究開発」

いろいろな条件に対応して操作者とCAをつなぐ仕組みづくりを、2025年の大阪万博で数十万人が利用する大規模実験を前提に研究しているとのことです。

今後は、自在化技術の統合と大規模実験に耐えるセキュアーな仕組みの構築だけでなく、「アバター共生社会企業コンソーシアム」と連携して企業での積極活動を推進するとのことでした。

3番目は、河岡PI。生命科学の研究、デバイスの利用がどう生体に影響をあたえるのかということで、「デバイスの利用は私たちにどのような影響を与えるのか? --マルチオミクス解析を用いたアプローチ--」というタイトルでした。

河岡PI 「デバイスの利用は私たちにどのような影響を与えるのか? --マルチオミクス解析を用いたアプローチ--」

河岡PIは、昆虫の研究から始まり、ゲノム生物学、がんに起因する不調に関する研究などライフサイエンスの分野の研究者。ロボット研究の接点は、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)での研究だったそうです。

今回紹介された研究では、ロボットやアバターの操作が生体に与える影響を明らかにするために、従来のテキストベースの調査や単一分子の測定に依拠した解析だけでなく、オミクス解析:分子レベルで全体を俯瞰する解析に取り組まれているとのことです。

オミクス解析の応用

このセッションでは、身体的障がい者だけでなく、自閉症や認知症の方、子育て中の親など、様々な方が参加できる未来の社会「新・未来」に向けて、その仕組みづくりの研究に取り組んでいる複数のPIからの発表が印象的でした。

記事を書いた人 ワタナベ
 ムーンショット型研究開発事業の広報1年目。最近オイルにはまって、エゴマ油を毎日とるようにしています


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