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誤り耐性型汎用量子コンピュータの実現を目指し、目標6公開シンポジウムを開催

2023年3月28日、ムーンショット目標6の公開シンポジウム「誤り耐性型汎用量子コンピュータの実現を目指して」が開催されました。
今回のシンポジウムでは、誤り耐性型汎用量子コンピュータの実現に挑戦するプロジェクトの活動が紹介されましたので、当日の様子をご紹介します!
気になる研究テーマを見つけた方は、ぜひ動画もご覧ください。

開会挨拶・来賓挨拶

まず、主催者を代表してJST理事長 橋本和仁から開会挨拶、続いて、内閣府の星野剛士副大臣から来賓挨拶がありました。橋本からは日に日に量子コンピュータ実現に対する期待が高まっていること、また、星野副大臣からは非常に挑戦的な目標設定であり、わが国の生産性革命や健康長寿社会の実現、国民の安心安全の確保といった目指すべき社会の実現に貢献することが期待され、一般の方々にも分かりやすくアピールし、研究成果で人々を魅了してほしいとのメッセージがありました。

JST 橋本による開会挨拶
星野内閣府副大臣による来賓挨拶

プログラムディレクター(PD)による
目標6の全体紹介

目標6の達成に向けた研究開発の責任者である北川勝浩PD(大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授)から、誤り耐性型汎用量子コンピュータの実現によって目指す社会像と、そのための研究開発体制の紹介がありました。

北川勝浩PD(大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授)による目標6の紹介

現在のスーパーコンピュータでは計算できないような窒素固定、光合成の量子化学計算ができるとされ、量子コンピュータによる解明によって食料・エネルギー・環境問題の解決につなげられると考えているとのこと。

目標6では、誤り耐性型汎用量子コンピュータの実現のために、新たに5つのプロジェクトを追加しました。ここからは、その新規プロジェクトの研究内容を各プロジェクトマネージャー(PM)から説明していきます。

新規プロジェクトの発足紹介

「拡張性のあるシリコン量子コンピュータ技術の開発」

理化学研究所 グループディレクター 樽茶清悟PMより「拡張性のあるシリコン量子コンピュータ技術の開発」プロジェクトについて説明がありました。このプロジェクトは、半導体の集積技術をうまく利用することによって、大規模な量子コンピュータの技術を立ち上げようとするものです。

樽茶清悟PM(理化学研究所 グループディレクター)

「ナノファイバー共振器QEDによる大規模量子ハードウェア」

早稲田大学 教授 青木PMから「ナノファイバー共振器QEDによる大規模量子ハードウェア」プロジェクトの説明がありました。このプロジェクトでは、既存のハードウェア方式とは異なる、世界で唯一の新しいハードウェア方式であるナノファイバー共振器QEDに基づく量子コンピュータの実現を目指します。

青木隆朗PM(早稲田大学 教授)

「大規模・高コヒーレンスな動的原子アレー型・誤り耐性量子コンピュータ」

自然科学研究機構 教授 大森PMから「大規模・高コヒーレンスな動的原子アレー型・誤り耐性量子コンピュータ」プロジェクトについて説明がありました。このプロジェクトでは、ここ5~6年で世界的に急速に注目を集めている冷却原子型の量子コンピュータの実現を目指します。光ピンセットで1個1個の原子を並べ、別のレーザー光で操作を行う量子コンピュータです。

大森賢治PM(自然科学研究機構 教授)

「スケーラブルで強靭な統合的量子通信システム」

慶應義塾大学 特任准教授 永山PMから「スケーラブルで強靭な統合的量子通信システム」プロジェクトについて説明がありました。このプロジェクトは量子コンピュータ同士の自在な接続を可能にする量子ネットワークを実現し、分散量子コンピュータを目指すものです。

永山翔太PM(慶應義塾大学 特任准教授)

「スケーラブルな高集積量子誤り訂正システムの開発」

京都工芸繊維大学 教授 小林PMから「スケーラブルな高集積量子誤り訂正システムの開発」プロジェクトについて説明がありました。
小林PMは海外出張中のため、オンラインでの発表となりました。このプロジェクトでは、Qubitより上位のレイヤの誤り訂正システムを専用のSoCで実現します。

小林和淑PM(京都工芸繊維大学 教授)

お昼をはさんで、午後からは既存の7つのプロジェクトの成果発表が行われました。各プロジェクトマネージャーが順に説明していきます。

既存プロジェクトの成果紹介

「超伝導量子回路の集積化技術の開発」

日本電気株式会社 主席研究員 山本剛PMから「超伝導量子回路の集積化技術の開発」プロジェクトの成果について説明がありました。ここでは、超電導誤り耐性計算機実現にむけた周辺技術の集積化、スケールアップに関する課題、取り組みについて話がありました。

山本剛PM(日本電気株式会社 主席研究員)

「イオントラップによる光接続型誤り耐性量子コンピュータ」

沖縄科学技術大学院大学 准教授 高橋PMから「イオントラップによる光接続型誤り耐性量子コンピュータ」プロジェクトの成果について説明がありました。原子を一つ一つ並べてそれを量子コンピュータとする、それを実現するのがイオントラップです。イオントラップを使って量子コンピュータを実現するための課題、これまでの成果について話がありました。午前中の説明にあった中性原子との違いは、トラップの堅牢性だそうです。

高橋優樹PM(沖縄科学技術大学院大学 准教授)

「誤り耐性型大規模汎用光量子コンピュータの研究開発」

東京大学 教授 古澤PMより「誤り耐性型大規模汎用光量子コンピュータの研究開発」プロジェクトの成果について説明がありました。従来の量子ビットは定在波で寿命があり、大規模化に適していないのに対し、古澤プロジェクトの光の量子ビットは進行波であり、寿命という概念がなく、パルス列で量子ビットを並べられるのでスペースを取らないところが要点だそうです。

古澤明PM(東京大学 教授)

「大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発」

株式会社日立製作所 主管研究長兼日立京大ラボ長 水野PMから「大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発」プロジェクトの成果について説明がありました。シリコンの電子のスピンを用いた量子ビット方式の量子コンピュータで、集積性が期待されるそうです。量子ビットをアレイ状に並べてアレイの上での量子操作を実現していくことがポイントです。

水野弘之PM(株式会社日立製作所 主管研究長兼日立京大ラボ長)

「量子計算網構築のための量子インターフェース開発」

横浜国立大学 教授 小坂PMから「量子計算網構築のための量子インターフェース開発」プロジェクトの成果について説明がありました。目指している量子インターネット、それを支える量子通信ネットワークと量子コンピュータネットワークについて話がありました。

小坂英男PM(横浜国立大学 教授)

「ネットワーク型量子コンピュータによる量子サイバースペース」

大阪大学 教授 山本俊PMより「ネットワーク型量子コンピュータによる量子サイバースペース」プロジェクトの成果について説明がありました。ネットワーク型量子コンピュータの基盤技術を確立すること、量子暗号などの量子プロトコルを実装するサイバースペースの量子版を実現することを目指しているそうです。

山本俊PM(大阪大学 教授)

「誤り耐性型量子コンピュータにおける理論・ソフトウェアの研究開発」

東京大学 教授 小芦PMから「誤り耐性型量子コンピュータにおける理論・ソフトウェアの研究開発」プロジェクトの成果について説明がありました。このプロジェクトのミッションは、誤り耐性型量子コンピュータを大規模化するためのハードウェア要求性能を大幅に低減するための理論・ソフトウェアの研究開発です。

山本俊PM(大阪大学 教授)

閉会挨拶 

最後に、北川PDから締めの挨拶がありました。
「約500名の方に参加いただき、大変ありがとうございました。今後はアウトリーチ活動のひとつとして、国際シンポジウムを7月に実施する予定です」

目標6 国際シンポジウムは、2023年7月18日~20日に赤坂インターシティコンファレンスにて開催予定です。詳細と参加登録はこちらから。


■ムーンショット目標6
「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」

■ 高橋優樹PM 対談記事
沖縄から世界へ ─ OISTでムーンショット目標に挑む2人 高橋優樹×宮崎勝彦

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